デジタルリアルティトラストへの投資を考える上で最も重要なのは、AIやクラウド化という社会全体の成長の恩恵を受けながら、安定した配当収入を狙えることです。
この記事では、世界最大級のデータセンターREITであるデジタルリアルティトラストについて、事業内容や株価推移、配当利回りから将来性、投資する上でのリスクまでを5分でわかりやすく解説します。

成長は期待できるけど、値動きが激しいハイテク株は避けたいんだよな…

それなら不動産からの賃料収入が基盤のREITは、有力な選択肢になりますよ
- デジタルリアルティトラストの事業内容と強み
- 現在の株価と配当利回りの水準
- AI時代における将来性と知っておくべきリスク
- アナリスト評価やおすすめの投資タイミング
デジタルリアルティトラストの事業内容と3つの強み
デジタルリアルティトラストは、現代のデジタル社会に欠かせない「データセンター」を運営する世界最大級のREIT(不動産投資信託)です。
AIやクラウドの普及で今後も需要拡大が見込まれるデジタルインフラに投資できる点が、最大の魅力と言えます。
世界中に広がる巨大な施設網、そして日本の大手企業との連携を武器に、安定した収益と将来の成長性を両立させている点が特徴です。
世界中のデジタルインフラを支えるデータセンターREIT
デジタルリアルティトラストは、データを保管・処理・通信するための中核施設である「データセンター」を所有・運営・管理し、そこから得られる賃料収入を投資家に分配する不動産投資信託(REIT)です。
世界25カ国以上、300を超えるデータセンターを保有し、Amazon Web ServicesやMeta、Googleといった世界的な巨大IT企業を含む4,000社以上の顧客にサービスを提供しています。
この事実は、私たちの生活に欠かせないクラウドサービスやSNSが、同社のインフラの上で動いていることを意味します。

データセンターって、ただの倉庫とは違うの?

サーバーやネットワーク機器を安定稼働させるための電源・空調・セキュリティを備えたハイテク施設です
このように、現代社会の根幹を支える「デジタル不動産」の大家として、盤石な収益基盤を築いている点が、同社の大きな強みです。
北米からアジアまで広がるグローバルなポートフォリオ
同社の強みは、特定の国や地域に依存しない世界中に分散された資産構成(ポートフォリオ)にあります。
最大の市場は北米ですが、ヨーロッパ、アジア、南米、アフリカにも事業を展開しており、投資可能資産の約35%を米国外で保有しています。
この地域分散によって、一国の経済情勢や地政学的なリスクの影響を受けにくく、安定した経営が可能になっています。
| 地域 | 主要拠点 | 特徴 |
|---|---|---|
| 北米 | バージニア州、テキサス州、カリフォルニア州 | 最大の収益源であり、巨大IT企業のデータセンターが集積 |
| ヨーロッパ | ロンドン、フランクフルト、アムステルダム | 主要な金融・ITハブをカバーし、安定した需要 |
| アジア太平洋 | 東京、大阪、シンガポール、香港 | 高い経済成長率を背景に、需要が急拡大中の成長市場 |
| その他 | ラテンアメリカ、アフリカ | 将来の成長を見据えた戦略的な拠点展開 |
グローバルに事業を展開することで、世界中のデジタル化の恩恵を受けながら、リスクを分散した安定的な成長を実現しています。
三菱商事との提携による日本市場での事業展開
日本市場における成長戦略の核となるのが、2017年に設立した三菱商事との合弁会社「MCデジタル・リアルティ」です。
この提携により、デジタルリアルティトラストが持つ世界水準のデータセンター設計・運営ノウハウと、三菱商事が持つ国内での不動産開発力や顧客基盤を融合させています。
すでに千葉県の印西市や大阪府の箕面市などで合計10棟以上のデータセンターを開発・運営しており、日本の旺盛なクラウド需要を取り込んでいます。

日本の会社と組むメリットは大きいの?

日本の商習慣や不動産事情に精通したパートナーがいることで、事業展開がスムーズに進みます
日本の大手総合商社との強固なパートナーシップは、成長市場である日本での事業を加速させ、企業全体の価値を高める上で重要な役割を担っています。
株価推移・配当利回りから見る投資魅力

投資判断をする上で、株価の値上がり益と安定した配当収入の両方が期待できるかは最も重要な要素の一つです。
企業の成長性と株主への還元姿勢を数字で確認することで、安心して長期投資できる銘柄かを見極められます。
ここでは、デジタルリアルティトラストの株価の歴史や配当実績を詳しく見ていき、長期投資対象としての魅力を明らかにします。
過去10年間の株価チャートの動き
企業の株価が長期的にどのような動きをしてきたかを知ることは、将来の成長性を予測する上で欠かせません。
デジタルリアルティトラストの株価は、過去10年間で右肩上がりのトレンドを描いてきました。
2021年には170ドルを超える高値を記録したものの、その後の金利上昇局面では一時的に下落。
しかし、2023年後半からはAI需要の高まりを背景に力強く回復しています。

コロナショックみたいな暴落時にはどうだったの?

下落はしましたが、デジタルインフラの重要性から回復も早かったのが特徴です。
このような市場全体の危機に対する回復力の速さは、社会に不可欠な事業を手掛けている証拠であり、長期保有の安心材料になります。
17年以上の連続増配実績と安定したインカム
連続増配とは、企業が毎年配当金を増やし続けることを指し、安定したキャッシュフローと株主還元への強い意志を示す重要な指標です。
デジタルリアルティトラストは、リーマンショック後の厳しい経済環境下でも増配を続け、2005年から2022年にかけて17年間も配当を増やしてきた実績を持っています。
これは、盤石な収益基盤がなければ実現不可能なことです。
| 年 | 1株あたり年間配当(ドル) |
|---|---|
| 2020 | 4.48 |
| 2021 | 4.64 |
| 2022 | 4.88 |
| 2023 | 4.88 |
この長期にわたる増配の実績は、投資家にとって将来にわたって安定したインカムゲイン(配当収入)が期待できる大きな魅力となります。
現在の配当利回りと配当支払月
配当利回りは、投資額に対して1年間でどれだけの配当を受け取れるかを示す指標で、インカムゲインを重視する投資では特に注目されます。
2024年6月時点の株価(約145ドル)で計算すると、デジタルリアルティトラストの配当利回りは約3.3%です。
これは、データセンターREITの中でも比較的に高い水準といえます。

配当はいつ受け取れるの?

3ヶ月ごとに受け取れるので、キャッシュフロー計画が立てやすいですよ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年間配当額(1株あたり) | 4.88ドル |
| 配当利回り(株価145ドル時点) | 約3.3% |
| 配当支払月 | 3月、6月、9月、12月 |
| 配当権利落ち日 | 各支払月の前月末頃 |
年4回、定期的に配当金が支払われるため、受け取った配当金を再投資に回すことで、複利の効果を活かした資産形成も可能です。
NISAを活用した非課税投資のメリット
日本の個人投資家にとって、NISA(少額投資非課税制度)をいかに有効活用するかは、資産形成の効率を左右する大切なポイントです。
2024年から始まった新NISAでは、「成長投資枠」を利用してデジタルリアルティトラストのような米国個別株に投資できます。
年間240万円までの投資から得られる値上がり益や配当金が非課税になるのは大きな利点です。
通常、米国株の配当金には米国で10%、さらに日本で約20%の税金がかかりますが、NISA口座で受け取る場合は日本の課税がありません。
そのため、手元に残る金額が大きくなり、効率よく資産を増やせます。
AI需要が牽引する将来性と知っておくべきリスク

デジタルリアルティトラストへの投資を考える上で、AIやクラウド化がもたらす追い風と、金利上昇などの潜在的なリスクを両方理解しておくことが重要です。
事業の成長を後押しする要因と、株価の下落につながりかねない要因を天秤にかけ、ご自身の投資判断の参考にしてください。
| 項目 | デジタルリアルティトラスト(DLR) | エクイニクス(EQIX) |
|---|---|---|
| 事業モデル | 大規模データセンター(ハイパースケール)に強み | 相互接続(インターコネクション)に強み |
| 時価総額 | 約490億ドル | 約710億ドル |
| 配当利回り | 3%台前半 | 2%前後 |
| 特徴 | 安定した配当収入を重視する投資家向き | 株価成長を重視する投資家向き |
成長の果実を得るためには、どのような追い風が吹いているのか、そしてどのような点に注意すべきなのかを具体的に見ていきましょう。
AI・クラウド化がもたらす成長シナリオ
AI(人工知能)やクラウドコンピューティングは、社会のデジタル化を加速させる中核技術です。
これらの技術が発展すればするほど、データを処理・保管するデータセンターの重要性は増していきます。
例えば、ChatGPTのような生成AIの学習や運用には、従来の何倍もの計算能力が求められます。
実際に、NVIDIAのCEOはデータセンター市場が今後5年間で2倍の規模に成長すると予測しており、デジタルリアルティトラストの事業機会は拡大の一途をたどります。

AIブームは一過性のもので終わらないかな?

AIやクラウドはもはや社会インフラの一部なので、需要は長期的に続くと考えられます
企業が自社でサーバーを持たずにAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft Azureのようなクラウドサービスを利用する流れも続いており、データセンター需要を力強く下支えしています。
競合エクイニクスとの事業規模・配当利回りの比較
デジタルリアルティトラストを検討する際、必ず比較対象となるのが同じデータセンターREITのエクイニクス(Equinix, Inc.)です。
エクイニクスは世界中のネットワークが集まる「相互接続」に強みを持つ企業です。
時価総額ではエクイニクスが約840億ドルと、デジタルリアルティトラストの約440億ドルを上回っています。
しかし、配当利回りに注目すると、デジタルリアルティトラストが3%台前半であるのに対し、エクイニクスは2%前後と、インカム収入を重視するならデジタルリアルティトラストに分があります。

成長性ならエクイニクス、配当ならデジタルリアルティトラストという感じ?

はい、ご自身の投資スタイルに合わせて選ぶのがおすすめです
安定した配当を受け取りながら長期で資産を育てたい投資家にとって、デジタルリアルティトラストは魅力的な選択肢となるのです。
投資判断に影響する金利上昇リスク
金利の上昇は、デジタルリアルティトラストのようなREITにとって逆風となる可能性があります。
REITは不動産を取得・開発するために多額の資金を金融機関から借り入れるため、金利が上がるとその返済負担が増加します。
例えば、政策金利が1%上昇すると、企業の利払い負担は数千万ドル単位で増加する可能性があります。
また、国債など安全資産の利回りが上昇すると、相対的にREITの配当利回りの魅力が薄れ、株価が下落する要因にもなります。

最近の金利動向が株価に影響しているのかな?

その通りです。米国の金融政策(FRBの動向)のニュースは必ずチェックしましょう
そのため、デジタルリアルティトラストに投資する際は、米国の金融政策や長期金利の動向を常に把握しておくことが大切です。
競争激化と技術革新への対応
データセンター市場は成長性が高い分、競合他社との競争も激しくなっています。
Amazon Web Services(AWS)やGoogle Cloudなどの巨大IT企業も自社でデータセンターを建設しており、市場環境は常に変化します。
さらに、データセンターの冷却効率を高める技術や、より消費電力の少ないサーバーなど、技術革新への対応も欠かせません。
古い設備は陳腐化し、価値が下がるおそれがあるため、常に最新技術へ投資し続ける必要があります。

常に業界トップでいられるとは限らないということか…

グローバルな拠点と顧客基盤が強みですが、油断は禁物です
デジタルリアルティトラストが今後も業界のリーダーであり続けるためには、戦略的な投資と効率的な運営を継続できるかが鍵となります。
アナリスト評価とおすすめの投資タイミング

企業の業績や専門家の分析は、投資判断を下す上で重要な情報源です。
特に、最新の決算内容を読み解くことで、企業の現在地と将来の方向性を把握できます。
ここでは、最新の決算データや主要な証券会社のアナリスト評価を基に、デジタルリアルティトラストへの具体的な投資タイミングについて解説します。
データに基づいた客観的な視点を持つことで、より納得感のある投資判断が可能になります。
最新決算から読み解く業績と今後の見通し
REITの収益力を測る上で重要な指標が調整後営業キャッシュフロー(AFFO)です。
これは、不動産から得られる実際のキャッシュフローに近く、配当金の源泉となる利益を示します。
デジタルリアルティトラストが発表した2024年第1四半期の決算では、売上高が約13億ドル、1株あたりのコアFFO(Funds From Operations)は1.67ドルとなり、市場の予測を上回る好調な結果でした。
AI向けデータセンターの力強い需要が業績を牽引しており、今後の見通しも明るいことが示されています。

最新の決算内容は良かったみたいだけど、今後の見通しはどうなの?

会社はAI需要の拡大を背景に、強気な見通しを示しています。
データセンター市場は今後も拡大が見込まれるため、賃料収入の安定的な増加が期待できます。
このことから、デジタルリアルティトラストの業績は、将来にわたって堅調に推移していくと考えられます。
主要証券会社による目標株価と投資判断
アナリストレーティングは、株式市場の専門家たちが企業の財務状況や将来性を分析し、投資家に向けて「買い」「中立」「売り」といった形で評価を示すものです。
2024年6月時点での主要証券会社によるデジタルリアルティトラストの評価は、全体的にポジティブなものが多くなっています。
例えば、バンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックスは「買い」の投資判断を継続しており、今後の株価上昇に期待を寄せています。
| 証券会社 | 投資判断 | 目標株価(ドル) |
|---|---|---|
| バンク・オブ・アメリカ | 買い | 156.00 |
| みずほ証券 | 中立 | 150.00 |
| ゴールドマン・サックス | 買い | 163.00 |
| シティグループ | 中立 | 155.00 |
多くのアナリストが現在の株価を上回る目標を設定している点は、この銘柄の成長性に対する信頼の表れです。
目標株価の平均値も上昇傾向にあり、市場からの期待の高さがうかがえます。
長期保有を前提とした株価の買い時
一度に大きな資金を投じるのではなく、ドルコスト平均法のように定期的に一定額を投資する方法は、購入価格を平準化し、高値で買ってしまうリスクを軽減します。
デジタルリアルティトラストのようなREITの株価は、金利の動向に影響を受けやすい特性を持ちます。
そのため、アメリカの金融政策が変更されるタイミングや、市場全体が下落している局面は、株価が割安になりやすく絶好の買い場となることがあります。
焦って一度に購入するのではなく、市場の動向を見ながら数回に分けて購入するのがよいでしょう。

結局、一番いい買い時はいつなんだろう?

市場全体の調整局面で、数回に分けて買い増していくのがおすすめです。
短期的な値動きに一喜一憂せず、配当を受け取りながら資産を育てていく視点が求められます。
AIやクラウドという長期的な成長テーマを背景に持つデジタルリアルティトラストは、数年単位でじっくりと保有する投資スタイルに適した銘柄です。
よくある質問(FAQ)
デジタルリアルティトラスト とは、一言で言うとどんな会社ですか?
世界中のデジタル社会を支える「大家さん」のような存在です。
AmazonやGoogleといった巨大IT企業などに、データを保管するためのハイテクな建物である「データセンター」を貸し出し、その賃料を主な収益源とする不動産投資信託(REIT)になります。
この銘柄に投資するメリットとデメリットを教えてください。
最大のメリットは、AIやクラウドの普及という時代の流れに乗り、事業の成長性と安定した配当収入の両方が期待できる点です。
一方、デメリットは金利が上昇する局面では、借入金の負担増や相対的な利回りの魅力低下から、株価が下落しやすいという弱みがあります。
AIブームが終わったら、この会社の将来性はないのでしょうか?
ご安心ください。
AIだけでなく、5G通信やあらゆるモノがネットにつながるIoT、クラウドサービスの普及も事業の強力な追い風です。
社会全体のデジタル化が進む限り、データセンターの需要は長期的に続くと考えられます。
新しいNISAで投資できますか?
はい、成長投資枠を利用して投資が可能です。
デジタルリアルティトラストのような米国株も対象で、得られた配当金や株価の値上がり益にかかる日本国内の税金が非課税になります。
これは資産を効率的に増やす上で大きなメリットです。
競合のエクイニクスと比較して、どちらを選ぶべきですか?
ご自身の投資スタイルによって判断が分かれます。
比較的高い配当利回りを維持しており、安定したインカム収入を重視するならデジタルリアルティトラストに強みがあります。
一方で、より株価の成長性を重視する場合は、エクイニクスが有力な選択肢です。
株価がどのくらいになったら買い時ですか?
「いくらになったら買い」という明確な株価の基準はありません。
市場全体の雰囲気が悪化して株価が下落している時が、長期的に見れば割安で投資できるひとつの目安になります。
一度にまとめて購入するのではなく、時間や価格を分散させて複数回に分けて購入する戦略をおすすめします。
まとめ
この記事では、世界最大級のデータセンターREITであるデジタルリアルティトラストを解説しました。
AIやクラウド化といった社会全体の成長の恩恵を受けながら、安定した配当収入を狙えることが、この銘柄の最大の魅力です。
- AIやクラウド需要を追い風にする将来性の高い事業内容
- 17年以上の連続増配実績に裏付けられた安定した配当
- 金利上昇や市場の競争激化といった投資前に知るべきリスク
この記事で解説した強みとリスクを改めて確認し、ご自身のポートフォリオに加えるべきか具体的に検討してみてください。

